市場調査(マーケティング・リサーチ)を効率的かつ効果的に実施するためには、綿密な調査計画を立案すること、最適な調査方法を採用すること、調査結果の分析と活用を効果的に行うことが必要です。
1.1 調査計画
調査計画には次表にあるような項目を盛り込むことが必要ですが、最も重要なのが調査目的です。ここが曖昧だと調査そのものが意味を持たなくなります。つまり、何のためにこの調査を実施するのかを明確にすることが重要なのです。
市場調査は、あらかじめ立てた仮説が正しいかどうかを立証するために実施するケースが大半ですが、これだけだと、極めて常識的な結果が導き出されるだけに止まり、他社との競争優位な戦略を立案する材料を獲得することに繋がりません。調査目的には、会社の経営者が想定していないような新たな材料を見いだすことも含めるべきです。
市場調査を実施するためには、大変な時間とコストが必要です。調査計画を立案する際、ともすれば、あれも・これもと欲張りがちですが、時間とコストを十分に念頭に置いて、期待できる効果との兼ね合いでバランスのとれた計画にすることが重要です。
1.2 調査手法
市場調査の調査手法には、質問ペーパを用いる質問紙調査、あらかじめ用意したメモに基づいてインタビュー形式で行う面接調査、リアルな現場を観察して行う観察調査があります。場合によってはこれらを組み合わせて実施することもあります。
いずれにしても、調査目的とコストの兼ね合いで適切な調査方法を選択する必要があります。
1.2.1 質問紙調査
質問紙調査で最も一般的でコストがかからないのが郵送法です。質問が書かれた用紙を調査対象者に送りつけて、返信して貰うやり方です。広範囲な調査が可能ですが、最大の問題は回収率です。設問も回答者が誤解しないような設計の工夫が必要ですし、回答者が途中で投げ出さないように、そのボリュームにも配慮が必要です。
一方、回答者に親切なやり方に訪問面接法があります。こちらは、調査員が調査票を持参して調査対象を訪問し、質問を説明しながら回答して貰い、これを記録します。大変な時間とコストがかかりますが、確実に回答が得られる方法です。しかしながら、調査対象者が任意の時間に在宅している保証はなく、空振りに終わるケースも多いことから効率面では課題があります。
郵送法と訪問面接法の中間のやり方に、留め置き法というのがあります。調査員が調査対象を訪問するのは訪問面接法と同じですが、この方法はその場で回答を求めるのではなく、調査目的などを口頭で説明した後、後日調査票を回収するやり方です。郵送法よりは回収率が良くなり、調査員の負担も訪問面接法ほどではなくなりますが、やはり全体的に時間とコストがかかることは避けられません。
近年では電子メールを用いたり、WEB上で調査が行われることも多くなっています。非常に手軽で、コストも殆どかからないというメリットがありますが、当然回答率は低く、手軽さ故の調査結果に関する信頼性にも疑問が残ります。
1.2.2 面接調査
いわゆるインタビューと呼ばれる調査手法です。キチンと設計された調査票は準備せず、簡単なメモに基づいて調査対象と面談して、対話の中から必要な情報を獲得していきます。個別に面談する方式と集団の座談会方式(グループ・インタビュー)があります。どちらも質問紙調査に比べてかなり踏み込んだ情報を獲得する出来る可能性がありますが、面談をコントロールする進行役に相当のスキルが必要なことは言うまでもありません。
グループインタビューの場合は、グループの構成に十分な配慮が必要です。上手くグループ内で相互作用が働き、効果的な情報が獲得できるようにメンバーを選ぶ必要があります
1.2.3 観察調査
街頭や店頭で、第三者的に消費者や来店者の行動を観察します。この方法は消費者の行動を直接観察でき、調査結果を活用するための具体的な情報を獲得することが可能になりますし、事前に全く想定してなかった貴重な情報が得られることもあります。しかしながら、この調査手法を効果的なものにするためには、面接調査以上に観察者に特別なスキルが必要です。
ただ、見ているだけでは何の情報も得られません。明確な目的意識と、何事も見落とさない鋭い観察眼が求められます。
1.3 調査結果の活用
どのような調査もそれが有効に活用されなければ、コストだけがかかることになります。一般的に、調査が終了すれば、まずは集計・分析が行われます。定量的な項目は集計作業が比較的容易です。一般的に提供されてる表計算ソフトや専用の集計ソフトを活用することになります。属性別の分析や各質問項目を組み合わせた分析も必要です。
定性的な調査項目については、色んな切り口で調査結果を分類することになりますが、調査票を詳細に観察することによって、調査前や調査実施中には想定しなかった新たな発見をすることがあります。
いずれにしても、市場調査は会社の今後の活動方針を決定する上で非常に重要な活動です。調査することが目的化しないように、十分な調査結果の分析が必要です。