外国人労働者雇用の基礎知識
日本は現在人口減少社会に突入しています。特に生産年齢人口の割合が急激に小さくなっています。所謂人手不足です。これを解消するために、女性活躍だとか、シニア層の活用とかが叫ばれていますが、外国人労働者の活用もその対策の一つになっています。
現在、我が国においては、技能実習生を入れると150万人以上の外国人が何らかの形で働いていると言われています。それだけに、外国人労働者を受け入れることは、決して特別なことではなくなっており、基礎的な知識を持って対応する必要性が高まっています。
外国人労働者の雇用を考える際、まずは出入国管理及び難民認定法(入管法)を理解する必要があります。入管法によれば、「在留資格」のない外国人は
日本に長期滞在はできず、就労することは事実上不可能です。
我が国においては、基本的に外国人の単純労働は認められていないことを理解すべきです。「安く雇える外国人労働者」という甘い考え方が、不法就労者を生み、様々なトラブルの源泉となり、外国人労働者の人権をも脅かしています。後述する入管法改正による新たな仕組みも、外国人労働者の単純労働を認めるものではないことを理解しましょう。
なお、近年、不法就労に係る取り締まりが強化されており、上陸拒否期間の延長や過去に強制送還歴がある者の一定期間入国禁止、罰金の引き上げなどが適用されています。
在留資格の種類
最も安定した在留資格は、身分に基づいて在留する者で、「定住者」、「永住者」、「日本人の配偶者」などがこれにあたります。次は、「専門的・技術的分野」に該当する者で、大学教授や弁護士、医師、研究者、教師、技術者、デザイナー、介護福祉士、スポーツ指導者などがこれにあたります。技能実習生などにも、就労条件付きの在留資格が付与されますので、就労することは可能です。
一方、文化活動や短期活動、留学、研修などで来日している外国人は、本来就労が不可能な在留資格で、報酬を受ける就労活動は認められませんが、留学生などは1週間で28時間以内であれば、本来の活動を阻害しない範囲で就労することが認められています。
外国人労働者雇用の留意事項
まず、「外国人労働者は安く雇用できる」という間違った考え方を改めましょう。外国人労働者にも、最低賃金法や労働基準法などの法令は日本人労働者と同様に適用されるのです。
雇い主には労働者に対する様々な義務や責任がありますが、これは外国人労働者に対しても同じです。実際の雇用現場においては、不法な慣行が未だに後を絶ちませんが、合法性は企業コンプライアンスの初歩です。しっかりと自覚しましょう。
どのような目的を持って、外国人を雇用しようとするのかを明確にしましょう。そうすれば、雇用する外国人のポストや人数、雇用期間、能力・技能などが見えてくるはずです。
次に、具体的な採用計画を考えます。労働条件や待遇をどうするか、募集方法・選考基準、必要経費と手続きなどを検討します。
外国人労働者には、言葉の問題や生活習慣、文化・価値観、ビジネス慣行の違いがあります。これらはよっぽど覚悟して対応しないとトラブルの源泉になります。最初からトラブルを予見して、対応策を考えておく必要があります。
研修という名の下に、外国人に単純労働をさせている例があるようですが、これは違法です。研修という在留資格は、公的な研修と実務作業を含まない研修にのみ与えられます。公的な研修としては、国や自治体、独法又はそれらの関係法人が受け入れ機関となる研修、国際機関の事業として行われる研修、外国の国や自治体の職員を研修生として受け入れる研修などがあります。
以上から分かるように、どうしても外国人を単純労働者として受け入れたい場合は、就労制限のない「定住者」などを雇用することを考える必要があります。パスポートや資格・登録証明書等で確認しいて雇用しましょう。
外国人労働者雇用の実態
雇用したい外国人労働者が日本にいるか、外国にいるかで対応が分かれます。外国にいる場合は、その国の日本公館で就労申請をする必要があります。
日本国内にいる場合は、就労制限の状態を確認します。就労制限がなければ、すぐ具体的な労働条件の検討と各種手続きに移ります。就労制限がある場合は、入国管理局で必要な手続きを行った後、労働条件等の検討に移ります。
外国人労働者を雇用したい場合、公的な相談窓口があります。一番身近な窓口は、おなじみのハローワークです。主要なハローワークには外国人雇用サービスコーナーが設けられているところもありますので、気軽に利用できます。東京、名古屋、大阪には、外国人雇用サービスセンターがあり、留学生や専門・技術分野の外国人労働者の斡旋をしています。
民間の仲介業者もありますが、不法に仲介を行っている所もあり、要注意です。厚生労働大臣の許可を受けているかどうかが一つの判断材料になります。
外国人労働者を雇用する場合は、意思疎通が十分でなかったためのトラブルを避けるため、本人の職務・責任範囲を明確に説明し、給与に関しても、日本人の場合より、事細かに説明しておく必要があります。労働条件通知書のひな形は、東京外国人雇用サービスセンターや厚生労働省のホームページで、複数の言語で掲載していますので、参考にしましょう。
技能実習制度
開発途上国の人材を合法的に受け入れる制度として定着している技能実習制度があります。特に一次産業系で活用されています。基本的に開発途上国の人材育成が目的の制度ですが、研修と違って、実務作業が実施できます。
公益財団法人の国際人材育成機構では、インドネシア、タイ、ベトナム政府が選抜した有能な人材の斡旋を行っています。これらの実習生は20歳代の若者で、母国で4ヶ月の訓練を受けてから派遣されますので、比較的即戦力として活用できます。在留期間は3年間で、受け入れる企業も人員計画を立てやすくなっています。ボーナスや退職金が不要ですので、トータルで比較的安価に若者を雇用できます。最大のメリットは受け入れ企業が海外進出する際、この制度で来日した人材が実習終了後帰国し、橋渡し役になってくれる可能性が高いことです。
企業側は、初期費用として、渡航費等15万円程度を負担する必要があります。毎月の費用は5~6万円程度とされています。
入管法改正による新たな外交人労働者受入制度
先ほど成立した入管法改正によれば、新たに「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格が設けられることになりました。「特定技能1号」の方は、ある程度の知識と日本語で働けますが、「特定技能2号」の方はさらに深い知識や技能が求められています。まずは、「特定技能1号」の運用が開始されることになっています。「特性技能2号」の方は数年後に先送りです。
この制度では、働ける業種が決まっており、介護、農業、外食業、建設業、宿泊業など14の業種が想定されています。
政府の見解では、現行制度の技能実習生の半数程度がこの「特定技能1号」の方に切り替えられるのではないかとのことです。「特定技能1号」の資格を獲得すれば5年間の在留が認められることから、現行の技能実習と合わせると、8年間の就労が可能になります。