IPOは企業が成長し次のステップに進む上で非常に効果的な手段です。IPOによって、企業だけでなく、経営スタッフ、株主、従業員に多くのメリットが生じます。しかしながら、IPOするまでには多くのマンパワーと費用が発生しますし、IPOによってこれまでは必要なかった留意事項が生じることも忘れてはいけません。
1.1 IPOの効果
IPOによる効果で最も分かりやすいのは企業の資金調達力が飛躍的に向上することです。これまで一部に限られていた資金調達先が一般の投資家に開放されるので、その効果は明確です。また、企業の知名度向上による様々なメリットも無視できません。人材確保などに非常に有効です。
あまり表面には出ませんが、IPOによって確立される経営管理体制の充実や経営スタッフのモチベーション向上もIPOの大きな効果です。企業価値向上にじわじわと効いてきます。
既存の株主にとっては、保有する株式の換金性向上が大きな効果となります。また、一般的にはIPOによってその企業の株式の価値が増加しますので、株主にとっては投資効果が上がります。
従業員にとって、株式公開企業の一員であることの誇りは相当なものです。IPOは、経営スタッフのモチベーション向上とともに、従業員のやる気を引き出す上で非常に効果があると言えます。
1.2 IPOの留意事項
よくIPOのメリットとディメリットという議論を聞きますが、IPOは基本的にメリットが中心で、極端なデメリットというものはありません。実際、IPOした企業にヒアリングすると殆どの企業はIPOして良かったと答えており、良くなかったという企業はまずいません。
しかしながら、IPOすることによって、これまで必要なかったことに注意することは生じます。
まず、当たり前ですが、IPO以前とは比較にならないほど経営者や企業の社会的責任が増大します。もう会社は社会的存在になったのだということを強く意識する必要があります。経営の透明性確保は当然です。株主に対する責任も重要です。
忘れてはならないことに、経営の自由度の制約があります。インサイダー取引に対する意識改革を徹底する必要がありますし、場合によっては、反社会的勢力からの圧力や敵対的買収にも目を光らせる必要が出てきます。
最後に、色んな意味でコストが増大することも忘れてはいけません。ガバナンス、マネジメントコストがより多くかかります。コストは費用面だけでなく時間コストもあることに留意すべきです。