労働契約書の意味
人を雇用すれば、必ず労働契約書を交わす必要があります。一つには、労働基準法に定めがあるからですが、本質的な理由は、雇用する側、雇用される側双方に安心感を持たせるためです。
雇われる側は、求人票どおりの労働条件が担保されるかどうかの不安があり、雇う側は、労働者側との将来のトラブル発生の懸念があります。労働契約書は、これらの不安を解消するために取り交わすのです。勿論、基本的なことは労働基準法の定めに基づいて取り決められます。「言った」、「言わない」の争いを解消することができるのです。
労働契約書は、雇用主と労働者個人との契約です。したがって、契約内容は個々の労働者によって異なって構いません。というか、個々の労働者のミッションや事情が異なるのであれば、それに応じた契約が結ばれるべきです。その意味では、確かに契約書のひな形は有効ですが、できるだけ、個々の事情を勘案したオーダーメイドの労働契約書を作成するように、雇用主と労働者双方で心がけるべきです。
労働契約書のポイント
労働基準法15条では、使用者は労働者に対して、賃金、労働時間等の労働条件を明示する必要があり、同法施行規則5条では、主要な労働条件は労働契約書などの書面による交付が義務づけられています。
また、パートやアルバイトの短時間労働者に対しても、パートタイム法が整備されており、短時間労働者を雇用する事業主には、労働条件を明らかにした文書の交付が義務づけられています。
労働契約には、雇用期間の定めがあるものと定めのないものがあります。
雇用期間の定めがない場合は、定年などの定めがある場合を除き、特別の解雇事由のない限り使用者が勝手に解雇することはできません。
雇用期間の定めがある場合は、3年(又は5年)を超えて期間を定めることはできません。この場合は、雇用期間が終了すれば自動的に契約は終了しますが、雇用期間の間は雇用が約束されています。
労働基準法15条等では、以下の労働条件を書面で明示することが義務づけられています。
- 労働契約期間
- 就業場所
- 始業・終業時間、休憩時間
- 休日・休暇
- 所定外時間
- 交替制勤務の場合の就業時転換
- 賃金に関する時候
- 退職
これらの項目は、就業規則などに規定されていれば、労働契約書に記載がなくても、使用者の義務は果たされたことになります。勿論、個々に異なる労働条件や特に配慮するべき事項は労働契約書に明記することになります。
労働契約締結時に特に注意すべき事項として、法に違反した労働契約は無効になるということがあります。労働契約書策定においては、法や施行規則に準拠したものとなるよう留意が必要です。
以下に、雇用期間の定めのないケース、雇用期間の定めがあるケース、短時間労働者のケースの三通りの労働契約書等のひな形を示します。これらはあくまで例示ですので、実際に策定する場合は、個々の事情を勘案するとともに、弁護士や社会保険労務士などの専門家によるチェックを受けることをお薦めします。
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