「緊急なものは(必ずしも)重要ではなく、重要なものは(必ずしも)緊急ではない」
これは、アメリカの第34代大統領であるドワイト・D・アイゼンハワー氏が演説中に述べた言葉です。同氏は、政治家として、複数のタスクを、緊急性と重要性という2つの視点で分別整理を行い、優先順位を付けて効率的に処理する手法を用いました。それが、「アイゼンハワー・マトリックス」です。「プライオリティ・マトリックス」ともいいます。
ちなみに同氏のモットーは「物腰は優雅に、行動は力強く」だったそうですので、表題にそれとなく引用させて頂きました。
使い方の3ステップ
1.まず、使う前に、組織における自分の立場と、達成すべき目標や最重要課題(いつまでに何をしなければならないか)の2つを明確にします。
2.続いて、複数のタスクが山積した状態(どのような性質のタスクがどのくらいあるのか)を整理します。
3.最後に、「アイゼンハワー・マトリックス」を用いて、タスクを以下の4つのタイプ(①~④)に分類します。
①重要かつ緊急なタスク:即時対応を要し、かつ目標達成にダイレクトな影響を及ぼすもの。→自分がいま直ぐにやらなければならない。
②重要だが緊急ではないタスク:中長期的には、高い目標達成度が見込まれるもの。→自分がいつかは必ずやるべきである。
③緊急だが重要ではないタスク:即時対応を要するものの、目標達成にダイレクトな影響を及ぼさないもの。→直ぐに他の人に委任する。
④重要でも緊急でもないタスク:非生産的なもの。→縮小や除外の対象とする。
「アイゼンハワー・マトリックス」を使いこなす新設サッカー部の顧問の例
1.ここでは、部員が11人しかいない新設サッカー部の顧問が、2週間後に控えた公式戦への初出場と初勝利を目指している状態を例に話を進めます。
2.顧問は、
「A 登校中に部員のひとりが怪我を負い戦線離脱。他の運動部から人材を借りてでも、欠員を満たして出場したい」
「B 公式戦に勝つために部員を交えて対戦相手の分析を予定している」
「C ゴールネットに穴が開いたので、取り換えが必要」
「D たまには気分転換で、知人から勧められた元Jリーガーのお笑い動画をこっそり見ようと思っている」
の4つを同時に処理しなければなりません。
3.顧問は、4つのタスクを「アイゼンハワー・マトリックス」に落とし込み、複数のタスクの優先順位を次のように考えました。
①重要かつ緊急なタスク:A 他の運動部から人材を借りるには、自ら責任者として矢面に立って、他の運動部の顧問と交渉しなければならない。
②重要だが緊急ではないタスク:B 試合本番前にやっておきたいけれども、今すぐにやる必要はなく、明日以降に延期でもよい。
③緊急だが重要ではないタスク:C 放置するとシュートがゴール裏に抜けてしまうので、練習効率を上げるために取り換えが必要だが、部員に任せられる。
④重要でも緊急でもないタスク:D 部員とのコミュニケーション良化のための雑談ネタにはなるかもしれないが、他のタスクと比べれば劣後する。
時間の掛け方の目安ですが、①②に自らが関わる時間を多く割いて、③④は自らが関わる時間を減らす方向で、メリハリあるタスク管理を心掛けることが、効果的なマネジメントに寄与する、というのが通説です。
4.最後に「そもそも論」
今回の例においては、事後的に「部員が15~20名くらいに達して十分なバックアップを擁する陣容となるまでは公式戦エントリーを控えるべきだった」といった、いわゆる「そもそも論」が組織の内外から出てくるかもしれません。
目標の設定にあたり、時期や難度のレベル感をどこに置くのが適正なのかついても考えさせられますし、有事に備えておくことの重みも痛感します。
おすすめのテンプレート
下図をクリックすると「タスク管理テンプレート一覧」に移動します。そのなかに「アイゼンハワー・マトリックス」が格納されています。