「合同会社」:「会社法」で規定
2006年度に施行、「合同会社」は同じ権限と責任を持った複数の人が集まって事業を起こすことを考えて作られた新しい組織。各人の資本が小さくても事業を開始することが可能であり事業内容によっては非常に効果的。
「有限責任事業組合」:「有限責任組合契約法」で規定
1998年度に施行、大企業同士の連携、大企業と中小企業の連携、産学連携など数多くの組合がある。専門分野での有志などさまざまな協力プロジェクトが今後促進することが期待されています。
両者は従来の起業家の形態とは異なります。しかしやり方次第では効率の良い運営が可能であり内容を把握して効果的に使いましょう。
合同会社(LLC)とは
1.持分会社の一形態と言われる合同会社とは?
合同会社は、以前からあった合名会社および合資会社に替わるものとして考えられたものです。法的根拠としては会社法で規定されています。米国で普及しているLLC(Limited Liability Company)の日本版です。
合名会社では「経営と所有(会社役員と株主)」が一致します。ただ個人のリスクが高いので採用している会社は最近では少ないです。内部自治は自由ですが社員は無制限の責任を負い、なにかあれば各個人の財産まで提供しなければなりません。
合資会社は合名会社と似てますが有限責任な社員がいる点が違います。無制限責任の社員のリスクは変わりません。これも最近ではあまり見かけません。
合同会社の目的は、リスクを最小にしてなおかつ内部自治を自由にできると言うことです。
合名会社:無制限責任の社員で構成
合資会社:無制限責任の社員と有限責任の社員で構成
合同会社:すべてのメンバーが有限責任の社員で構成
合名会社と合資会社は所有と経営の分離がなされてません。合同会社は所有と経営の分離ができるより近代的な制度と言えます。
2.自由に配分できる利益
合同会社は投資比率が高い社員が必ずしも企業への貢献度が高いとは限りません。そこで合同会社は社員に対して投資比率に関係無く利益を配分できます。ただこれは定款で定めなければなりません。もちろん会社が得た利益の範囲内でのことです。
3.合同会社の決まりその他
1.社員になる人は設立登録前には資金を調達します。
2.「貸借対照表」、「損益計算書」、「株主(社員)資本等変動計算書」などの財務諸表を作成する。
3.上記財務諸表は債権者からの検査やコピーの依頼があればそれに応じる義務があります。
4.資本の減額や剰余金を超えた所有権の払い戻しの場合には、債権者に公式公報への異議申立てが可能であることを通知する義務があります。
2~4は債権者の利益を保護するための処置です。
合同会社の社員は有限責任であるためリスクが少ない利点があります。しかしその反面債権者が保護されないおそれがあります。そこで2~4のルールが設けられました。よりオープンな経営することで債権者を保護しようと言うことです。
合同会社が有効な場合
起業は別に個人経営でもできます。しかし個人経営の場合失敗したらすべて個人の責任となりリスクがとても大きい。また資金も集めにくい。そこで会社という組織が作られるようになりました。
かつては小規模会社を設立する場合有限会社を選ぶことが多かったのですが、最低資本金300万円がネックになってベンチャービジネスなどには向かないところがありました。また特例措置として資本金1円の株式会社が可能になるともはや有限会社の存在意義自体希薄になり、有限会社は廃止になりました。
しかし株式会社は取締役会が必須の機関となるため、取締役は3名以上、監査役1名以上、と合計で最低4人の役員が必要になります。その他煩わしいことも多く小規模経営に向いているとは言えません。
そこで小規模の企業に最適な合同会社が考えられるようになりました。合同会社は米国やイギリスのLLCを参照して作られた制度です。米国では社内のLLCの自由自律性を生かし共同研究、ベンチャーキャピタル、映画制作などに使われてます。このような分野ではハイリスクハイリターンで無限責任では意欲を削がれかねません。そこで有限責任の合同会社が採用されることになります。今後は日本も同様に幅広く使われることが期待されてます。
LLCの設立の手続きをしよう
合同会社という名前ですが別に複数の社員が必要ってわけではありません。1人の社員でも合弁会社を設立できます。さらに、法人でも社員にできます。合同という名前は合資や合名との兼ね合いでつけられただけでそれ自体には深い意味はありません。
設立時には、定款を準備し、登録後に登録をします。定款の認定などは要りません。
LLCの設立までの流れ
定款を作成
社員になる人は定款を作成し、すべての人は自分の氏名と印章に署名します。
定款で定める事項は次のようになります。
目的
商号
本社所在地
社員の名前または名前と住所
すべての社員が責任を負うことを述べた旨
社員の出資とその価額
出資金を用意
社員になる人は、設立登記前資金を支払う必要があります。
また現物出資も可能です。
設立の登記
登録事項は以下の通りです。
目的
商号
本社および支店の所在地
存続期間または解散理由(定款に規定がある場合)
資本金額
業務執行役員の氏名
代表人の氏名または住所
代表者が法人である場合は、社員の職務を遂行する者の氏名および住所
広告の方法
有限責任事業組合(LLP)
1.有限責任事業組合(LLP)とはなにか?
有限責任事業組合とは法人格を持たない組合の一種です。一番のメリットは「パススルー課税」と呼ばれる課税方法です。組合に利益が発生しても、組合自体には課税されません。もちろん無税ってわけではありません。もちろん構成員には所得税が発生します。
合同会社は法人税を支払った後に配当します。当然配当に所得税が発生します。つまり二重に課税されるのです。「パススルー課税」は大きなメリットとなり得るものです。
有限責任事業組合は継続的なというより割と短期のプロジェクトをするためのものです。(短期でなければいけないわけではない)
合同会社とは良く似ています。内部の自主性と有限責任をバランスさせるという意味では同じです。ただ合同会社は株式会社に移行できるのに対し有限責任事業組合はできません。また内部留保がしにくいのもデメリットです。
有限責任事業組合は組織の内部ルールが法律で詳細に規定されていません。投資家間の相互合意によって決定されます。よって投資家(組合人)の共同プロジェクトにおけるインセンティブ(動機づけ)をより容易にし、ビジネスニーズに応じて柔軟な組織管理を可能にします。
柔軟な権限の分配や損益の分配
投資家の労力、知的財産権、ノウハウなどを反映して、投資家の利益と損失と権威の分配を投資比率とは異なる方法でおこなえます。
内部組織の柔軟さ
LLPの統治は、投資家の間で柔軟に決められます。
(取締役会や監査役などの組織の設立をしません)
2.有限責任事業組合と合同会社との違い
合同会社と有限責任事業組合のとの大きな違いは、企業の法人格の有無です。 合同会社には法人格がありますが、有限責任事業組合には法人格がありません。
有限責任事業組合には組合のため、法人税を適用することは不可能です。そのため構成員へ直接課税する「パススルー課税」が適用されます。
合同会社は法人として課税され、さらに所得税も構成員に適用されます。
合同会社と有限責任事業組合の差一覧
合同会社(LLC) | 有限責任事業組合(LLP) | |
根拠とする法律 | 会社法 | 有限責任事業組合法 |
法人格 | あり | なし |
責任 | 有限責任 | 有限責任 |
利益分配 | 定款で自由に定められる | 組合契約で自由に定められる |
株式会社への組織変更 | 可能 | 不可能 |
税金 | 法人税、所得税 | 所得税 |
このため、合同会社は株式会社への転換に関して長期的な継続を目指す場合に向いてます。有限責任事業組合はより短期のプロジェクトで参加者はすでにもつその能力を発揮できるビジネスに適しています。