商圏調査の目的
商圏調査を行う目的は、商圏内の顧客動向を把握して、商売の仕方に反映させるためです。決して調査そのものが目的化してはいけません。
商圏調査は、商圏の設定、商圏内の消費動向の把握、競合店の動向把握、顧客のセグメンテーション、調査結果を踏まえた販売戦略の立案の順に実施します。
商圏の設定
自店の商圏の範囲を物理的に設定します。商圏の設定をしないと具体的な消費動向を調査することは出来ません。
一般的な商圏は食料品などの最寄り品を扱う場合は半径500m、家具や電化製品などの買い回り品は半径1kmとする場合が多いですが、実際の顧客調査から設定する方が現実的です。
つまり、実際に来店した顧客の住所を調べて、地図にプロットします。300人もあればデータとしては十分です。プロットした点の80%程度をカバーする円を描いて、それを商圏とします。
商圏内の消費動向の把握
次に設定した商圏内における消費の動向を調査します。商圏内にどれ位の世帯があって、一世帯別に年間どれ位の自店商品が購入されているかを調べるのです。現在の事業計画の見直しや今後の戦略に活用するためです。
世帯数は、自治体の統計資料を活用して、町・丁毎の数字を一覧表にまとめます。一世帯あたりの品目別の消費額は都道府県別の資料があればベターですが、なければ全国平均を使います。この一世帯あたりの品目別の消費額に世帯数を掛ければ、自店が取り扱っている商品別に、年間どれ位の市場規模があるか分かります。
自店の売り上げと比較して、売り上げが市場規模に届いていない場合は、競合店に流れているか、自店の営業に何らかの問題があることになります。通常は競合店と市場を分け合っていると考えて、シェアを上げる工夫をすることになります。
競合店の動向把握
存在する市場のどれ位のシェアを獲得するかは、店を経営する上で最も重要な課題の一つです。そして、その多くは競合店の競争力がどの程度あるかで決まります。
競合店は同じ業態の店とは限りません。思わぬ形で、思わぬ店が競合相手だったりします。問屋へのヒアリングやチラシ、顧客の話、ネット情報などから近くにどのような競合店が存在するか調べます。
競合店の存在が確認できたら、その店の競争力(集客力)を推し量ります。品揃えや売り場面積などをザックリと調べて自店とのシェア比率を見積もります。
これで計算した潜在的な自店の売り上げ額と実績を比較して、実績が潜在力に満たなかった場合は、自店の営業方針や計画を疑います。
顧客のセグメンテーション
顧客の消費動向は、その地域の地理的要因、人口・世帯の動向、生活者の趣味・嗜好など様々な要因で変化します。
何より重要なのは、全ての人を対象にした販売計画は現実的にはあり得ないと言うことです。リソースに限りがあるからです。
したがって、現実的な販売戦略を立てるためには、顧客を層別し、ターゲットを明確にすることです。これによって、現実的な品揃えの計画が実現可能になるのです。これをセグメンテーション・ターゲティング戦略といいます。
調査結果を踏まえた販売戦略の立案
商圏調査を踏まえ、セグメンテーション・ターゲティング戦略に加えて、さらに綿密な販売戦略を立てていきます。
形式的な商圏調査だけではなく、商圏をこまめに歩いて顧客の動向を直感的にも把握することが重要です。数字には表れてこない、思わぬ落とし穴があったり、チャンスが見つかったりします。
競合店の長所、短所を有効に活用します。陳列方式や品揃え、接客方法などはコストを掛けずに改善することが出来ます。また、他店の弱みは自店の強みにすることが出来ます。
他店と同じことや、これまでと同じことをしても競合には勝てません。他店も同じように商圏調査をして、戦略を考えているのです。頭を柔軟にして、先入観にとらわれない発想が求められます。ちょっとした目の付け所から、思わぬ突破口が見つかることがあります。
事業計画書のテンプレートはこちら