1.1 IPOとは何か
IPOは「Initial Public Offering」の頭文字を取ったものですが、「上場」や「株式公開」と同じ意味で使われます。資金調達の対象範囲を広く一般に公開・拡大することです。株式が一般の投資家の間で売買されるようになり、それまで創業者や関係する限られた投資家だった株主が不特定多数に広がります。
IPOすると、企業の価値を高めるために必要な資金を幅広い投資家から集めることが可能になりますが、一方で責任と義務も発生することを忘れてはいけません。会社は創業者の個人会社からパブリックカンパニーに変わります。つまり、会社は社会的存在となります。
会社には、適法性、情報開示による透明性、組織的・計画的運営そして収益性などが求められることになり、当然経営者自身の責任も非常に大きくになってきます。これまでの意識を抜本的に変革することが必要で、IPOすることが目的化し、社会的存在としての会社の価値を高めるという本来の目的を見失ってはいけません。
1.2 IPOの準備として必要なこと
一般的にIPOの準備期間は最も短くても3年は必要だと言われています。以下IPOの準備に必要な項目を列記しますが、これらの多くは一度策定すればそれでOKということではなく、PDCAサークルによる不断のレビューが必要なことは言うまでもありません。
- 監査法人の決定
- 会計、組織、管理などの社内規程の整備
- グループ会社の整備(必要な場合)
- 有価証券届出書など上場申請書類の作成
- 引受証券会社の決定
- 資本政策の立案と実行
- 株式事務代行機関の決定
- 反社会的勢力対策の立案と実行
など
1.3 IPOの3年前にすること
IPOの3年前には会社としてIPOすることをキチンと意思決定する必要があります。つまり、意思決定をした後、3年間を準備期間として設定するのです。意思決定するにあたっては、創業者と一部の社員だけでなく、会社全体としてのマインドを揃えることが非常に重要です。IPOまでの作業量、業務に与える影響などを考えると、それは至極当然のことです。
準備期間の初年度、つまり3年前には、監査法人による予備調査を受けます。ここで、IPOまでに必要な準備事項や改善事項を明らかにします。同時に、メインバンクに資金繰りや管理系人材の斡旋などを相談します。また、ベンチャーキャピタルとは主に資本政策に関する相談をします。これ以外にも、証券代行機関、印刷会社、顧問弁護士、コンサル会社など多方面の機関と、申請書類の作成や経営戦略、法律面の問題などについて、綿密な相談・協議を開始します。
1.4 IPOの2年前にすること
準備期間の2年目には、再度監査法人による調査を受けます。前年度の予備調査で指摘された事項が改善されているかチェックします。期末には改めて監査法人の監査を受け、財務・会計、各種規程類、社内システムなどを最終確認します。準備が不十分な場合は、IPO準備のプロセスを強行せず、準備期間を1年延ばして再チェックしましょう。
また、このタイミングで幹事証券会社を決めるとともに、IPOに必要な書類も具体的な作成作業を開始する必要があります。
1.5 IPOの1年前にすること
運営体制、財務・会計、労務、ディスクロージャー体制など全てに関して、監査法人をはじめ関係機関の指導を受けつつ、PDCAサークルを繰り返し回し、最終的なチェックをします。また、IPO申請書類の成案を得て監査法人等にチェックしてもらいます。当然、この期も監査法人の期末監査を受け、適正である旨の評価を得る必要があります。
1.6 IPOする年にすること
申請関係書類が完成すれば、これを証券取引所に提出して上場審査を受けることになるのですが、書類を提出してそれでOKということにはなりません。何度も現地調査や社長ヒアリングを受けることになります。当然、その都度書類も修正・再提出を繰り返します。通常は、2~3ヶ月様々な指導を受けて、やっと最終版の提出という運びになります。その後上場承認が下りてIPOということになるのです。
以上のように、IPOは並大抵の覚悟では出来ないということがお分かりになったと思います。綿密な準備と関係者との連携、膨大で複雑な作業が避けて通れません。でも、IPOにはそれだけの価値があります。会社の成長ステージを一段上げるためにはIPOが必要なのです。繰り返しますが、IPOが最終目的ではありません、社会的存在としての会社の価値を向上させるための新たなステージのスタートだという意識を持ってチャレンジしましょう。
IPOに関する色んな情報が証券取引所、証券会社、監査法人のホームページにあります。まずはこれらを一読することをお勧めします。