株式会社という位ですから、会社に最も大きな影響力を及ぼし得るのは株式を保有する株主です。そして、その影響力は株主総会において行使されます。創業者(経営者)にとって、株主は会社を資金面で支えてくれる協力者であるとともに、自身の株式の金銭的価値を高めるために、会社の行動をチェックする監視役でもあります。このため、創業者(経営者)は、株主が株主総会においてどのような権利を行使し得るのかを十分に承知しておく必要があり、それを踏まえた資本戦略を立てておく必要があります。
1.1 2/3以上の株式保有の場合
発行株式の2/3以上の株式を保有する株主は、特別決議と呼ばれる会社経営の最も重要な事項を決定することが出来ます。具体的には、定款の変更や取締役の解任の他に会社の合併や解散などの権利です。もうお分かりのように、2/3以上の株式を保有する株主は会社の生殺与奪件を握っていると言っても過言ではありません。創業者としては、何としてもこの権利を保有したいところですが、もし単独で保有することが出来ない場合は、友好的で信頼できる株主群との連合軍を形成し、所謂安定株主の確保を図ることが決定的に重要です。
1.2 1/2以上の株式保有の場合
株主総会は民主主義の原則が適用される、基本的には多数決の世界です。つまり、過半数さえ確保しておけば、大抵の意思決定を行うことが可能です。ただし、前述の特別決議はその原則からは除かれますので、注意が必要です。過半数の株式を保有しているからと言って安心は出来ないと言うことです。安定株主確保に向けた資本戦略を油断なく実施する必要があります。
1.3 その他の場合
2/3以上の株式を保有する株主は特別決議を決定することが出来ますが、逆の言い方をすれば、もし、1/3以上の株式を保有する株主がいる場合、その特別決議の決定を覆される可能性があるということです。創業者(経営者)は1/3以上の株式を保有する株主に対して相当の注意を払う必要があります。
創業者(経営者)は、上記以外の株主を無視して良いということではありません。3%以上の株式を保有する株主は、株主総会の招集を要求したり、会社の帳簿閲覧や会社の業務をチェックする検査役の選任を要求することが出来ますし、1%以上の株式を保有していれば、株主総会において議案を提出することが出来ます。
1.4 株主と上手く付き合う
創業者(経営者)は、大株主に対する配慮は勿論大切ですが、少数株式保有の株主達とも、常に良好な信頼関係を築いておくことが必要です。少数株式保有の株主から非常に有用なビジネスのアイデアが提起されることもあるからです。
一時的に株主と経営者が経営方針などで対立することもあり得ますが、基本的には双方の最終目的は同じです。その企業の社会的・経済的価値を如何に高めるかという意味では同じ船に乗っているのです。株主が持ち得る権利を良く理解した上で、日頃から常に株主と意思疎通を図り、良好な信頼関係を築いておくことを心がけましょう。